宮沢賢治の、ちょっと風変わりな詩があります。
「政治家」
1927年(昭和2年)、31歳の時の作品です。
政治家 宮沢賢治
あっちもこっちも
ひとさわぎおこして
いっぱい呑みたいやつらばかりだ
羊歯の葉と雲
世界はそんなにつめたく暗いけれどもまもなく
さういふやつらは
ひとりで腐って
ひとりで雨に流される
あとはしんとした青い羊歯ばかり
そしてそれが人間の石炭紀であったと
どこかの透明な地質学者が記録するであらう
この詩を書くに至った具体的なきっかけや題材は何だろうと思い、1927年あたりの内外の政治状況をみてみたのですが、特別これといったものは無さそうです。
少し前に花巻農学校を退職し、地元花巻で開墾、肥料の相談、楽器の練習、レコードコンサート、童話の読み聞かせなどを始めた頃で、おそらくは中央のできごとではなく、もっと身近な政治家の有様を見ていて書いたものなのではないかと思います。
遠い未来の地質学者からしたら、97年前も今も同じ地層、「石炭紀」ということになるのかもしれません。
この詩を朗読しました(奥様が)。
「朗読とBGM」というより、ポエトリーリーディングのつもりで制作しているので、音楽が大きめです。
音自体は以前つくったものに、あれこれ手を加えたもの。
背景のデザインや、14/8の変拍子とレイヤーを重ねたようなポリリズムで美しいカオスを表現しようとしたのですが、騒々しいだけの、ただのカオスになってしまいました・・・。
ノートの隅に描いて慌てて消す相合傘のように、こっそりと。
words : Miyazawa Kenji
music : Kuroda Minato(←自分のペンネーム)
これだけでもう、幸せ(¥0)です。
「透明な地質学者」が何を表すのかはよくわかりませんが、「透明な」って良い響きですね。
「透明なデザイナー」とか「透明なギター弾き」とかになりたいです。