人と栖と

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「クリスマスを知らない」ムーミン一家がおこす、優しく静かな奇跡   「もみの木」

短編集「ムーミン谷の仲間たち」に収録されている9編はいずれも名作なのですが、最終話の「もみの木」は、まさに珠玉の短編といえる美しい物語です。

 

ムーミン一家は冬眠するので、クリスマスを知りません。

「もみの木」は、冬眠中に起こされてしまったムーミンたちが、「クリスマスという面倒な怖いお客様が来る」と勘違いすることで展開する楽しい騒動と、小さな命たちに訪れる優しく静かな奇跡の物語。

 

読後、部屋の中が穏やかな光に包まれるような、温かい気持ちになります。
そして会う人会う人に勧めまくることになる可能性があります(笑)。

ネタばれはいけないので、機会がありましたら是非読んでみてください。

 

最近、小説や映画、アニメなど、特に子供向けのもので、「闇」を描くことで「光」を表現しようとするものが多い気がしませんか。

あえての残酷さといいますか、子供も現実を見た方がいいというような空気といいますか・・・。

現実から目を背けるとか、臭いものに蓋をするとかという意味ではなく、私は「光は光として描きたい」という願いを強く持っています。

建築でも、空間をいったん闇で満たしたうえで、一筋の光を導くようなデザイン手法があります。

確かに、劇的な効果や感動があり、私もそういったものに憧れをもっていました。

一方で、しだいに何か作為といいますか、ある種の「わざとらしさ」のようなものも感じるようになってきました。

難しいことかもしれませんが、私は建築に限らず、すべての創作で「光は光として」、「闇は闇として」描くことを目指しています。

 

その点、この「もみの木」は、私にとって理想的な「光の物語」。

そして、作者のトーベ・ヤンソンさんは憧れのクリエイター。

ムーミン谷の仲間たち」は、ひとつひとつの物語も、短編集としての流れも素晴らしく、またいつかそれぞれについて書いてみたいと思います。

うちのツリーは「もみの木」ではなく、松ぼっくりです・・・。

皆様、よいクリスマスを!。