1845年の夏、28歳のHDソローはウォールデン湖のほとりに小屋を建て、自然の中でシンプルな生活を始めました。
「森の生活」はその2年2か月の記録です。
初めてこの本を読んだのは25年位前のことで、以降10回位読んだのですが、1ページ目から最後のページまで一気に通読できたのは、たぶん1回だけだと思います(笑)。
私の場合、どうしても章ごとにバラバラと読む読み方になってしまいます。
つまらないというわけではなくて、逆に面白すぎるというか、「濃すぎて」途中で疲れてしまうのです。
この「森の生活」はエッセイなのですが、「名言集」のような雰囲気を持っています。
大作家の名エッセイを一晩かけて煮詰めたみたいで、濃厚すぎて・・・、箸休めがないといいますか、「一回休憩させてください」という感じになってしまいます。
しかも、(ここが私がソローさんを好きな理由でもあるのですが)ちょっと「狙って」書いている感じがあるんです。
それはカッコよすぎるでしょみたいな・・・。
私の家には三つの椅子があった。
ひとつは孤独のため、もうひとつは友情のため、三つめは交際のためである。
真崎義博 訳 宝島社文庫
何だかすごそうだけど、よくよく考えるとあまりピンとこないというか・・・。
ソローさんはかなり毒舌でもあります。
こじらせている気配が行間から伝わってきます(笑)。
同じく敬愛する、鴨長明さんと似たテイストの雰囲気を漂わせていて、6世紀半ほど時を隔ててはいますが、もしや転生したのではないかとさえ思います。
通読するのは大変ですが、小さな家に住むこと、自然と共に生きることへのヒントが満載です。
この「森の生活」もそうですが、「一市民の反抗」など、ソローさんの他の著書も、いずれも後世に大きな影響を与えた名著ですので、また時々まとめてみたいと思います。
しっかり「理解できた」言葉のなかから、いくつか引用を。
家について。
ほとんどの人は、家とは何かということについて一度も考えたことがないらしい。
とにかく近所の人と同じような家を持たなければ、と思い込んでいるために、不必要な貧乏をしているのだ。
森に小屋を建てたことについて。
思慮深く生き、人生の本質的な事実のみに直面し、人生がおしえてくれるものを自分が学び取れるかどうか確かめてみたかったからであり、死ぬときになって、自分が生きてはいなかったことを発見するはめにおちいりたくなかったからである。