人と栖と

小声で語る 小さな家と本と音楽のこと

知らぬが仏か  小心設計者の悩み

ある大工さんがこんなことをおっしゃっていました。

「自分が建てた家には二度と近づきたくない。」

なんと薄情な・・・とお思いかもしれません。・・・でも

建築の現場では、どんなに注意深く施工していても、たくさんある工程の中ではミスをしたところ、納得できないところができてしまいます。

ですから、その大工さんがそれを見たくない、思い出したくないという気持ちは、私にはよくわかります。

 

建築の設計者であれば、地震で揺れるたび、台風が通過するたび、胃の痛い思いをする方も多いと思います。

私は、自分が設計したものでなく、ただ点検を頼まれただけの建物であっても、もしや見逃した所があるのでは・・・、などと何年も気になったりするほどの小心者です。

我が家はもちろん自分の設計ですので、ある意味自分の「失敗」の中に住んでいるようなものです(笑)。

 

設計上も悔やまれる点がありますし、施工上も「あの時大工さんがよそ見しながらやってたから、くぎを斜めに打ち抜いちゃってるな」(笑)みたいなところも、いくつも覚えています。

やり直してもらえたものもありますし、手遅れだったところもあります。

 

隅々まで把握しきっているからこその、安心感もありますが、知らなければ抱えることのなかった、うっすらとしたストレスもあります。

心配事の9割は起きないといいますし、そもそも安全率を何倍にもかけて設計していますからほぼ杞憂なのですが、それでも心配なのが「設計する」ということなのかなと思っています。

 

それとも、皆さんもっとメンタルが強いのかな。

だったら自分も、もう少しだけ強くなれたらと思います。

 

でも、建築はもちろん、自動車や家電やあらゆるものは、小心設計者の「心配」で安全が保たれているのかもしれません。

そう思えば、私のような小心者も社会には必要なのかなと思ったりもします。(なんだか急に気弱になってます 笑)