人と栖と

小声で語る 小さな家と本と音楽のこと

ちいさな ちいさな おんなのこ

本の読み聞かせをした記憶は大切な宝物です。

その時は体力的にも精神的にも疲れ果てていたような気がするけれど、
もうディテールなんかとんでしまって、何か温かいものだけが残っています。

 

絵本は一冊だって処分できません。

幼稚園の園服なんかは卒園したら、すぐ人に譲りました。

もともと譲ってもらったものだし。

でも本だけは無理なようです。

 

中でも大切なのは
「ちいさな ちいさな おんなのこ」

フィリス・クラシロフスキー 文 / ニノン 絵 / 福本 友美子 訳(福音館書店

昔あるところに小さな女の子がいました。
猫より犬より薔薇の木よりも小さくて、垣根の向こうも見えないほどの。
でも、少しずつ大きくなって、できなかったことが少しずつできるようになります! 
金魚鉢に手が届くし、猫もだっこできるし、新しい大きなベッドだって買ってもらいました!
誰もが経験したことのある、成長することの素朴な喜びを、淡く繊細な絵と平明な言葉で描きます。
小さなあなたにも、小さかったあなたにも、みんなに届けたい、あたたかなストーリー。

 

   出版社の紹介文より

 

絵も文も美しい大好きな絵本。

こんな風に「おねえさん」になっていくなんて、

はるかかなたの遠い未来のように感じていた日々。

そんな成長を見守るのが楽しみでした。

 

ところが、ドタバタと嵐を避けて、

降りかかる火の粉を払いのけているうち、

気が付くと赤ちゃんだった娘は、

この本の中で成長した「おねえさん」をあっという間に抜き去って、

何やら面倒な反抗期娘に・・・。

 

うっかりしていました。

一番大切なときを見ていませんでした。

どんなに後悔しても時は巻き戻せません。

だから、もう何があっても目を凝らして、目を離さない。

これからも嵐はやってくるかもしれないけれど、

大切なものと、どうでもいいことを見極める目を持とう。

そう決めたのでした。