人と栖と

小声で語る 小さな家と本と音楽のこと

卒業式と真っ先に式場を去った娘のこと

先日、娘の中学校の卒業式がありました。

前半は卒業証書授与式、後半は生徒達の歌や挨拶という構成。

 

授与式の最後に来賓の祝辞があったのですが・・・。

「歴史のサイクルから考えると、そろそろ大きな戦争が起きる。大変な時代になるから、しっかりやれ!」みたいな、縁起でもない、およそ祝辞に似つかわしくない主張を延々と聞かされて、会場がドヨーンとなって前半が終了(笑)。

「こんな時代にしたのは、あんた達の責任だろ」って、みんな思っていたんじゃないでしょうか。

 

後半は、前に全員並んだ生徒たちの感動的な合唱や、

修学旅行や部活の思い出、

悩みの相談に乗ってくれた先生や親への感謝の言葉など、

会場からすすり泣きが聞こえるような温かい雰囲気に包まれました。

前半の、「第三次世界大戦の恐怖」に戦慄するような空気が一掃されてよかった・・・。

あの来賓、もう勘弁してほしいです。

 

二十人ほどの生徒達の挨拶が終わり、締めの言葉はうちの娘が担当することになっていたようです。

最前列の真ん中がへこんでいるように見えたのは、学年で二番目に小さい娘がそこでスタンバイしていたからでした。

 

いよいよ娘の出番なのですが、・・・マイクスタンドの前に進んできたのは良いものの、直前の背の高い男子の影響でマイクがとんでもない高さに・・・。

一瞬マイクを見上げ、背伸びしながら話そうとしたり、スタンドをあれこれいじったりするものの、上手く調整できず。

会場がうっすらとニヤニヤしはじめた頃、

娘は、ややキレ気味に、マイクをスタンドからガッと乱暴に引き抜き、プロレスのマイクパフォーマンスみたいに話しはじめました。

 

私にはちょっと、それがカッコよく思え、おおっ、と感心しているうちに、その短い言葉を聞き逃してしまいました。

「私達は、今からここを去って行きます。」みたいな事だったかな・・・。

 

言い終わると、またガッとマイクをスタンドに差し、そのままツカツカと式場を一人去り始めました。

エリザベス女王に最後の演奏を捧げたバグパイプ奏者の去り際が、一瞬頭をよぎります。

しばらくすると、その後を生徒達が並んで退場し始め、皆でそれを見送るというかたちになりました。

ちっちゃいけれど、先陣をきって式場を去って行く、ちびっこ剣士のようなさまは、先鋒の誉れとでも言うんでしょうか、なかなか美しい姿ではありました。

 

中学校の最後に良いものを見させてもらい、感謝です。

まだ、過去を振り返る年なんかじゃないし、前だけを見てグイグイと進め。

娘も友達もみんな、卒業おめでとう!。