人と栖と

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インド・ネパールでブッダの生涯をたどる  カピラヴァストゥで目から水が流れた件

以前、自己紹介でも少し書きましたが、私は(お金をとる)放送局を退職してから、インド・ネパールの旅に出ました。

29歳の時です。

インド・ネパールと国境をまたいで移動したのは、ブッダの生誕の地ルンビニ(ネパール)から入滅の地クシナガラ(インド)まで、その生涯をたどったからです。

特に仏教徒というわけではないのですが、ブッダの「生涯」に興味があったのです。

 

それぞれ、様々な感慨がありましたが、私にとっての主な目的地は、カピラヴァストゥでした。

カピラヴァストゥは、ブッダが青年ガウタマ・シッダールタとして育った城の跡地であり、四門出遊の伝説にある、彼が出家を決意し、城を出た「門」のあった場所とされています。

とはいっても現在発掘されているのは紀元前2世紀以降のもので、ブッダが生きた紀元前5世紀(諸説あり)頃の遺構はさらに深い地中にあるようです。

 

出家したのは彼が29歳の時(これも諸説ありますが)と伝えられ、同じ29歳で、大きな組織を後先考えずに飛び出して、どこにも行く当ての無い自分にとって、どうしても立ってみたい場所だったのです。

シッダールタが城を出た門の跡に立ってみると、「2500年前もこんな感じだったんだろうな」と思えるような、荒涼とした平原がどこまでも続いていました。

強い決意があったとはいえ、この景色の中に向かって進むのは、どんなに心細かっただろうなどとぼんやり考えていると、突然目から水が流れてきました。

悲しいわけでもなく、もちろん泣いてなどいないので、涙ではない、「水」が、ただ流れ続けました。

幽霊も一回しか見たことがありませんし(笑)、特別何か見えたり感じたりするタイプではないので、その時は不思議と、「こういうこともあるんだろうな」位にカジュアルにとらえていました。

 

特にオチはなく、ただそれだけなのですが(笑)、それでもその後は、霧が晴れるようにモヤモヤがとれ、特段の理由は無いものの「建築の道に進もう」と、新しい進路を決めることができました。

結果的に、あの時あの場に立ったのは、自分の生涯の前半戦で最も大切で意味のある出来事でした。


他にもインド・ネパールでは得難い経験をたくさんすることができました。

地球の歩き方」を穴の開くほど読み込んで、生水にも注意していましたし、旅もほぼ順調でした。

 

あの時、道端で名前も知らない果物を口にするまでは・・・(笑)。