百人一首 36番歌
夏の夜は
まだ宵ながら
明けぬるを
雲のいづこに
月やどるらむ
(古今集)
作者は清原深養父(きよはらのふかやぶ)。
名前が渋くてお気に入りです。
清少納言のひいおじいさんですね。
枕草子初段の
夏は夜
月の頃はさらなり
夏の夜と月。
ひいおじいさんへのリスペクトが感じられますね。
素敵なひ孫さん。
ふかやぶさん。
下級貴族だったので、政争に巻き込まれることもなく、その生涯の大半を和歌や琴など、貴族のたしなみに費やしていたようです。
こんなうたも詠んでいます。
光なき
谷には春もよそなれば
咲きてとくちる
もの思ひもなし
光も差さない谷には
春も関係ないから
花が咲いて散ることへの
もの思いにも無縁です
ちょっと泣けてきます。
もとより出世の望みもない自分には、喜びも悲しみもありませんよ、ということですね。
時代は下りますが、敬愛する鴨長明先輩にも通じるものを感じます。
この、どこか「負けが込んでいる」先輩たちには親しみが止まりません。
私も争いを避けて光の差さない谷でじっとしているタイプなので(笑)。
ふかやぶ先輩と夜の高速をドライブしているイメージが浮かびました。
唐突すぎて、なぜだかわかりません(笑)。
助手席で先輩が呟きます。
夏の夜ってほんと短いよね
宵のうちだと思ってたら
もう明けちゃったよ
いったい、この雲のどこに
月は宿をとってるのかな
ふかやぶ先輩の洒落た諧謔のうたをのせる曲をつくってみました。
明け方の高速をイメージしています。
36番歌のイメージとは程遠いかもしれませんが、もう後戻りはできません(笑)。
日本語の朗読は奥様にお願いし、英語部分は適当(たぶんいろいろ間違っています)に英訳したものを「音読さん」で読み上げてもらいました。
夜の運転中いつも、名曲Steppin' Out(Joe Jackson)が勝手に脳内再生されます。
ミックスも全部終えた後、Steppin' Outの、あの印象的なピアノのフレーズをねじ込みたくなって、一小節だけ「本歌取り」で織り込んでみました。
F#からCに転調して弾いたからなのか、あのキラキラ感が薄れてしまいました・・・。
With a sense of homage to
”Steppin' Out”
80年代のかほり。