人と栖と

小声で語る 小さな家と本と音楽のこと

早春のソネット 浅き春に寄せて

立春ですね。

うちには受験生がいることもあり、春はまだまだ先。

それでも時折空気が温む瞬間があって、季節が進んでいることを感じます。

 

早春です。

年齢を重ねるごとに好きな季節が変わってきました。

ずっと若い頃は夏。

花粉症になってからは、春が苦手に。

秋はいつでも大好き。

この頃、この早春を意識するようになりました。

花粉が本格的に舞う前のわずかな、凪いでいるような、この繊細な季節を大切に過ごしたいと思います。

 

ただ、のんきに春の気配なんて味わっていられるのも、温暖な静岡だからかもしれません。

北陸の被災地と静岡の気温の、5℃くらいでも交換出来たらいいのに。

 

立原道造さんの美しい早春の詩、「浅き春に寄せて」を奥様に朗読してもらいました。

4行、4行、3行、3行の14行詩。

ソネットですね。

韻をふんでいないので、正式なソネットではないという話もありますが、詳しいことはよくわかりません。

その清冽な水のような透明感が、ただただ好きです。

浅き春に寄せて 

   立原道造

 

今は 二月 たつたそれだけ

あたりには もう春がきこえてゐる

だけれども たつたそれだけ

昔むかしの 約束はもうのこらない

 

今は 二月 たつた一度だけ

夢のなかに ささやいて ひとはゐない

だけれども たつた一度だけ

そのひとは 私のために ほほゑんだ

 

さう! 花は またひらくであらう

さうして鳥は かはらずに啼いて

人びとは春のなかに笑みかはすであらう

 

今は 二月 雪の面につづいた

私の みだれた足跡……それだけ

たつたそれだけ――私には……

言葉のリズムが歌詞のようです。

音をあてやすい、どこまでも優しい詩。

言葉の区切りにあわせて小節を決めて、内容にあわせてコードや音を選んで、弾けもしないピアノで曲をつくりました。

「こいだば まんず うたっここへるに えぇな。」なんて、秋田弁でぼそぼそ言いながら。

静岡は雪が降らないので、雪のことを考えている時には、第二の故郷秋田で暮らしていた頃の自分に戻っています。

youtu.be本歌取りというわけではないのですが、早春の名曲ランキング第1位(自分調べ)「赤いスイートピー」の冒頭メロディーの一部を、途中うっすらと練り込みました。