人と栖と

小声で語る 小さな家と本と音楽のこと

うつり香がうすくなってゆく 「うつり香の」清原元輔

久しぶりに和歌の朗読音源をつくってみました。

もともと百人一首の和歌に音をつけてみようと張り切って始めたものの、20首つくったところで早くも息切れして、長いこと止まっていました。

百人一首はもちろん名歌揃いなのですが、あまり自分の好みに合わないものも多くて、意欲が薄れていました。

考えてみたら、誰に強制されているわけでもないですし、謎の百人一首縛りという軛から解き放たれることにしました。

なんだかすっきりしました。


再開の一首目は清原元輔の、この大変美しいうたを選びました。

うつり香の
うすくなりゆく
たきものの
くゆる思ひに
消えぬべきかな


(現代語訳)
あなたのうつり香が
うすくなってゆきます
そんな薫き物の煙のように
焦がれる想いで
私も消え果ててしまいそうです

 

清原元輔(きよはらのもとすけ)

平安中期の貴族・歌人三十六歌仙の一人。

清少納言のお父様ですね。

己の禿頭をいじらせて笑いをとるような愉快な方だったようですが、一方でこのような甘美な哀しみをうたってしまう、そんなギャップに惹かれます。

このうたの切なさを音でデザインできていたらいいなと思います。


細かい話ですが、二句切れの微妙なリズムの揺れをどう表現するか、随分悩みました。
これからの課題です。

youtu.be