人と栖と

小声で語る 小さな家と本と音楽のこと

小さな家のレコード  「あなた」小坂明子

はじめて買ったシングルレコードは、小坂明子さん「あなた」でした。

作詞・作曲は小坂明子さん、編曲は宮川 泰さん。

発売は1973年の年末。買ったのは翌74年。

50年も経ってるんですね。

どれほど聴いたか・・・。

小さな頃、レーベルに描かれた芋虫がぐるぐる回っているのを飽きずに眺めながら、この歌を口ずさんでいました。

 

もしも 私が家を建てたなら
小さな家を建てたでしょう

 

この歌を10代も20代も、大人になっても聴き続け、やがて私の中で「あなた」は、小さな家のアンセムになっていきました。

 

家を建てるなら小さな家を。

今、家づくりについていろんなことを言ったり考えたりしていますが、ほとんどは、このレコードに由来しているような気がします。

図面を描いている時も、心のなかでは1974年の、体育座りの男の子が歌っている、調子はずれの「あなた」が小さく鳴っています。


本当に大切な宝物のようなレコード。

永遠のマスターピース

 

「あなた」  作詞・作曲:小坂 明子 

 

もしも 私が家を建てたなら
小さな家を建てたでしょう
大きな窓と小さなドアーと
部屋には古い暖炉があるのよ

真赤なバラと白いパンジー
子犬の横には
あなた あなた
あなたが居て欲しい

それが私の夢だったのよ
いとしいあなたは 今どこに


ブルーのじゅうたん敷きつめて
楽しく笑って暮すのよ

家の外では 坊やが遊び
坊やの横には
あなた あなた
あなたが居て欲しい

それが二人の望みだったのよ
いとしいあなたは 今どこに


そして 私はレースを編むのよ
わたしの横には
わたしの横には
あなた あなた
あなたが居て欲しい

 

家にとって大切なこと。

理想の家とは。

いろんなことが言われていて、私には正解はわかりません。

人の数だけ正解があるのかもしれません。

 

私にとっての理想の家は、

用・強・美を備えた美しく小さな器。        

・住みやすく頑丈で、長持ちすること

・住む人の命を守ること

・無駄がなく飽きのこない、美しいデザインであること

 

 

でも、そんな教科書的なことはいいんです。

本当に大切だと思っていることは、実のところこれだけ。

「横に誰がいるか」、「横に何があるか」

 

人でなくてもいいんです。

犬でも猫でも小鳥でも、花や本やピアノでも。

 

もし今一人であったとしても、

その誰か、その何かを迎える場があるか。

 

その誰かが座る椅子があるか。

その何かがおさまる場があるか。

 

そんな場があったら、それはもう「家」です。

 

 

「あなた」から学んだのは、そのような事でした。


1974年、スピーカーの前で膝を抱えている小さな男の子の耳元でこっそり話しかけられたらいいな、と思います。

今そこでぐるぐるまわっている芋虫のレコードは、君の未来に一番の影響を与える宝物になるから大切に、だけど擦り切れるまで聴いてね。


今思うと、確かにそんな声を聴いたような気がします。

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