人と栖と

小声で語る 小さな家と本と音楽のこと

悲しい時にそっと始まった家づくりがありました

ハウスメーカーさんのCMは夢に溢れていますね。

若いパパ、ママと可愛いお姉ちゃんと弟さんが白い朝日を浴びて幸せそうです。

実のところ、家づくりは思ってもみなかった困難に直面したりして、つらいこともあったりします。

ですから、出会いから引き渡しまで、できるだけそんな幸福のイメージのなかで家づくりを経験できるように、手を尽くしてくれるハウスメーカーさんのお仕事は、それをサービス業と捉えても大変価値のあることだと思っています。

わざわざ辛い思いをする必要はありませんからね。

困難を優しくオブラートで包んで、可視化しないというのもプロの大切な仕事かと思います。

 

私の場合は自分が建築士で、かなりイレギュラーな家づくりをしているので、もちろん自分を守ってくれるそのような優しいオブラートはありません。

そのうえ、体調が良い時でないと書くことはもちろん、思い出すことも苦痛なほど、次々とやってくる不幸と周囲の無理解や裏切りの中で、誰にも祝福されない塗炭の苦しみの中での家づくりでした。

 

娘の小学校入学に間に合わせたい。

ただただ、それだけの理由でがむしゃらに図面を描いていました。

 

思い通りの設計や施工ができるはずもなく、夢に描いていたプランの半分も実現できていません。

竣工後も、見るのも嫌なくらいこの家を憎んでいて、出かけて帰宅するときなど、この角を曲がったら全部無くなって更地になっててくれないかな、なんて本気で思っていました。

できることなら、一からやり直したいと。

 

暗いトーンの文面ですみません。

 

ところが、です。

それから9年近くたって、何故かはわかりません、この家に対して少し愛おしさが生まれてきているんです。

「幸先」とか「縁起」とか「始め良ければ」みたいな言霊に苦しむことは少なからずあるのですが、それでも、悲しみのさなかに建てたこの家が愛おしくなりつつあるんです。

 

そんなことを考えつつ、ぼんやり天井なんかを眺めながら、学生の頃から大好きな、浅香唯さんの名曲「セシル」を聴いていました。

 

恋は楽しい時より 悲しい時に

そっと始まった方が 長く続くね

 

「セシル」浅香唯  作詞 麻生圭子 作曲 NOBODY

 

・・・たぶん、これです。

上手く説明できません。

でも、これなのです。

 

悲しい時にそっと始まった家づくり。

何もオブラートに包まない、むき出しで体験した家づくり。

涙を流しながら描いた図面。

だからこその、強さもあるのだと思います。

youtu.be

まとまりの無い文になってしまいました。

でも、もし必ずしも恵まれた状況ではない中で家づくりに向き合っている方がいらしたら、

きっと大丈夫ですよ!。

もしよかったら「セシル」を聴いてみてください。

多くの方と同じように、私もこの曲に救われた一人です。