建築に興味をお持ちの方であれば、どこかでUNBUILT(アンビルト)という言葉を耳にされたことがあるかもしれません。
設計・構想されたものの、未だ建てられていない、建てられなかった建築。
古今東西、多くのUNBUILTの建築が図面やパース、模型などとして「存在」していますが、「現実世界に存在していない」からこその、物語を感じます。
新国立競技場のコンペで勝利したものの、そのプランが白紙撤回され、2016年惜しくも他界されたザハ・ハディドさんは「アンビルトの女王」などと呼ばれていましたね。
Tokyo New National StadiumはUNBUILTゆえに、取り壊されることもなく、イメージとして永遠に建ち続けます。
UNBUILTの建築は大きく2つのパターンに分けられます。
・建築されることを前提に設計したのに、諸事情で実現にいたらなかったもの。
・はなから実現を目指してなどいない、現状への批判や新しいコンセプトの提案、マニュフェストのようなもの。
それから、コンペの落選案などは、結果的に後者のような存在になっていきますね。
落選案の方が実施に向けた様々な妥協を経ない分、エッジの効いたプランのまま存在し続けて後世に大きな影響を与えたりするのは、興味深いところです。
落選を承知で後者の道を選んでいるような例も多々あります。
次元は途轍もなく低いのですが、私もUNBUILTだらけです(笑)。
ほぼ、前者(しかも低レベル)のパターンですが・・・例えば、
・飲食店の移転の計画があって、その設計をしていたのですが、どう考えても商圏や資金計画に無理があるため、計画の延期か中止を一生懸命提案してしまい・・・、終了。(元の場所で営業を続けられているので正解だったと思っています。)
・住宅設計の相談をしているうちに、別の設計事務所の方が、お客さんにあっている気がして、よそを一生懸命推薦してしまい・・・、終了。
・設計のあれこれを、何故か「恋愛」に例えられているうちに、心がつらくなってしまい(笑)・・・、終了。
「人並外れて、後先を考える力が弱い」という負のスキルを遺憾なく発揮してきました。
今後、地球上に自分の設計したものが建つ予感がしません。
それでも、途中まで描いた図面やパースは可愛い我が子のようなもので、しつこく手直しをしたりして、いつか何かに使えないかと、一応保存してあります。
話は変わりますが、
小さな頃からやたらと夢に出てくる建築のイメージがあって、それがあんまりしつこいので10年以上前に図面やパースに描いて、模型まで作ってみたことがあります。
そうしたら、もう夢に出てこなくなりました(笑)。
何か成仏的なものでしょうか。
前世でよっぽど未練を残した建築とか。
まさにUNBUILTの建築です。
実際に建つのは来世かな(笑)。
随分気の長い長期プロジェクトです。