人と栖と

小声で語る 小さな家と本と音楽のこと

巣をつくりたいハチ 小さな家の由来記 6

ひと頃、集中的にまわっていたある有名避暑地。

今はどうなのかわかりませんが、当時はイメージしていたよりも手頃な価格の土地がたくさんありました。

今、私たちが住んでいる静岡のいなか町よりも、はるかに低い坪単価でした。

 

その避暑地の中心部はもちろんとんでもない価格なのですが、私たちがまわっていたのは中心からはずれた、静かな場所だったというのもあると思います。

これなら何とかなるかも、と思ったりしていました。

 

でも、その避暑地の不動屋さんと世間話をしている時でした。

話が途切れたので何の気なしに「住宅ローン」の話題を振ってみたときのことです。

突然彼が吹き出したので、どうしたのかと思っていたら、

「この辺りでローンの話なんかする人いませんよ。(笑)」

・・・だそうです。

 

やっぱり、そこは私たちの暮らせるまちではなかったようです。

 

 

先日から、我が家の軒下にあしながバチのつがいが頻繁にやってきます。

巣をつくろうとしているようです。

 

そこは毎日洗濯物を干す場所なので、巣をつくられると困ります。

剪定したばかりの葉っぱつきの長い枝でバサバサやって追い払います。

追い払っても追い払っても2匹でやってきて、気がつくとおしりから粘液のようなものを出して垂木にこすりつけています。

巣を固定する接着剤のようなものでしょうか。

2匹で一生懸命共同作業をしています。

 

何だか邪魔するのは気の毒な気がしますが・・・。

でもやはり巣は困るので、その都度追い払います。

何だか一日中追い払っているようです。

 

よくわからないのですが、私も

「ごめんね。ここはだめだよ。巣にはむいてないよ。」

なんて、ずっと謝っています。

 

 

2匹のハチは、きっとあの頃の、私たち。

 

足を棒にして、とんでもない数の土地を見てまわり、微かに見えた希望と、それとセットになっている挫折と、行く先々で起こるちょっとした嫌なことと。

歩いても歩いても、探しても探しても、いつも何かに追い払われてきました。

 

ただ一つ、追い払われなかった今の栖はやっぱり運命だったのかな、なんて今は思います。