両親がまだしっかりしていた頃、よく聞いた話があります。
多少「盛る」傾向があるので(笑)、話半分に聞いていたというか、ひょっとしたらデタラメかもしれないのですが・・・。
こんな話でした。
いま私の名乗っている名字は、もともと(音は似ているのですが)全く別のものでした。
いろいろアバウトで、それが日清戦争なのか日露戦争なのかわからないのですが、私達のご先祖様は次男で、その戦争時に兵隊にとられてしまう危険がありました。
長男は跡取りということで、徴兵されなかったんですね。
そこで、次男だったご先祖様は急遽分家し、家長になって兵役を逃れたそうです。
兵役を逃れるために昔の人がした工夫は何かで読んだことがあって、これは当時よくあった例のようです。
ただ私が好きなエピソードは、さらに念を入れて、別の名字を「街で買ってきて」つけたということです。
名字って街で売ってたのか!。
さらに、元のものと「音の似ているもの」にしたところが、ちょっと可愛い。
臆病だとか卑怯だとか考える人もいたかもしれません。
実際そのように謗られたかもしれません。
でも、これが本当の話だとしたら、私はこの、臆病者の謗りをうけるリスクを覚悟で逃げた、勇敢なご先祖様が大好きです。
そして何より感謝しています。
逃げなければ、私も私の娘もこの世に存在していなかったかもしれません。
大げさに言えば、その後続く何千何万という人の命を救ったともいえます。
これが英雄的行為でなくて何なのかとも思います。
私も臆病者なので、身に危険が迫ったらスタコラと逃げるタイプです。
娘にも、誰に何を言われてもいいから、かっこ悪くても「一目散に逃げる」ように事あるごとに伝えています。
「みんな」と違ってもいいから逃げて、何としても生き延びて。
そして嵐が去ったら、その時は力を尽くして意義のある仕事をする。
世界をより良くするように。
そんな自分の生かし方をするよう、伝えています。
それが「勇敢な臆病者」のご先祖様に応えることになるのだと思っています。