人と栖と

小声で語る 小さな家と本と音楽のこと

その家を誰のために建てますか? 小さな家の由来記9

2023年11月4日

親のためか、子どものためか。

土地探しや設計のポイントをどこに置くかということなんですが、正解はたぶん無くて、「その時々、人それぞれ」かなと思っています。

私の場合、当時は「子どものため」でした。

長文が書けなくなってきたので、そこについてはまたあらためて書いてみたいと思っています。

ただ、そんなことについて書いた以前の文章があったので、思ひ出に残しておきます。

2017年 5月27日 
土地選びの知と情  

 

土地を選ぶ時には、金銭的なことも含め、その後の影響が大きいですし、検討する要素が多すぎて悩みますね。

よく勧められるのは、仕事でやるように条件を箇条書きに書き出して、重要度に応じて点数をつけたりして、できるだけ客観的に判断できるようにすることです。

これは言ってみれば「知」の部分。

一方で、どうしても上手く言葉で表現できなかったり、まして数値化などできないものもありますね。

そちらは、「情」の部分とも言えます。

多分、この「知」と「情」のバランスが上手くとれた時に、土地選びもスムーズに運ぶんだと思います。

 

私達の土地選びの際も、あっちに揺れたりこっちに揺れたり、なかなかバランスがとれず難儀をしました。

 

地元に戻ってからは土地を探す気力も失くしていたので、実家がもともと持っていた雑種地を借りようかということになりました。

敷地形状や周辺施設、法的な規制など慎重に検討し、それこそ「知」の部分はまずまずでした。

そこで、設計や施工者探しなど計画を進め、地盤調査の結果も問題なく、土留めの工事など着々と準備をしていました。

 

ただ、一点だけ気になることが・・・。

その後すぐ産まれる娘が通うことになる学校は、それほど遠くはないんですが、敷地は学区の一番「はずれ」で少し寂しい所。

下校時などおそらく最後の一人になってしまうんです。

女の子だとわかっていたので余計に気にかかっていました。

頭の片隅で何となくうっすらと気になりながら、それでも他は問題ないし、完璧なものは無いよねと無理に納得して一応作業を進めました。

「情」の部分を見て見ぬふりをしていたんだと思いますが、やっぱりきちんとバランスをとっておかないとだめなんですね。

 

娘が無事産まれ、はじめてその顔を見た瞬間、夕方薄暗くなってから一人トボトボと家路をたどる娘の姿が頭をよぎりました。

次の瞬間には別の土地を探す決断をしていました。

時間と労力とコストをかけて準備したものを、一瞬で捨てました。

私は何事にも度が過ぎるほど慎重で、あれこれ悩み、優柔不断で決断力がありませんが、この時ばかりはビジネスエグゼクティブのようになっていました。

 

再開した土地探しの旅と家づくりの数年を経て、今、娘は小学生。

我が家の前はこども達の通学路。

いつも賑やかな声が響いています。

そのうち娘が友達に囲まれて大騒ぎしながら帰ってきます。

これこそが望んでいたこと。

こんなに幸せなことはありません。

 

2023年11月4日

小学校、中学校ともに徒歩数分。

その恩恵もあと5か月で終わりです。

春からは、この家と土地の新しい目的を探していきたいと思っています。