人と栖と

小声で語る 小さな家と本と音楽のこと

手付流しと倍返し 小さな家の由来記 1.1

先日なにげなく「手付(てつけ)」のことを書いたのですが、不動産の売買にそれほど馴染みのない方もいらっしゃるかもしれないと思い、慌てて「手付」について簡単にまとめてみました。

「申し込み金」と雰囲気が似ているので、ちょっと混乱しがちですよね。

 

「手付(金)」は、土地の売買契約をする際に、買主が売主に対して支払うお金ですね。

普通は決済時に返ってくる=残代金に充てられることになります。

 

そして、「手付流し」(音だけ聞くと何だか風情がありますが・・・笑)は、買主が契約を解除する場合に、その手付を放棄することです。

手付は失ってしまいますが、売主から違約金を請求されることもありません。

 

ちょっと固い言い方ですが、判例によると、「契約において特に定めがない場合には、手付は解約手付であると推定する」こととなっています。

この解約手付というのは、契約成立後でも、一方の当事者だけの意思で契約の解除ができるようにするために支払われる手付金です。

 

ですから、手付を流しさえすれば、契約を解除できるんですね。

 

一方、「手付倍返し」(何だか恐ろしい響きですね)というのもあって、こちらは売主が契約を解除する場合で、手付の2倍の金額を買主に支払います。

 

手付金の金額は売主と買主が話し合って決めますが、売買金額の5~10%くらいが相場(上限は20%)のようです。

 

結構な金額ですね。

私はサインするとき手が震えました(笑)。

 

住宅ローンの審査が通らなかった時に手付を取り戻すために、「住宅ローン特約」を結んでおくと安心ですね。

何年か前、まだ土地が決まっていない依頼者の方と家づくりの方向性について打ち合わせをしていた時、急に「土地を契約しました」との連絡がありました。

家の相談は散々しているのに、土地については一言も相談してくれませんでした・・・。

どうもフィーリングのようなもので決めてしまった節があります。

 

敷地図をみると、今まで相談していた家が建てられるような土地ではありません。

そのことを正直に話してみると、「だったら100万(の手付)流せばいいんですよね」と、スナック感覚(笑)で言われて驚愕したことを覚えています。

 

いつか書くかもしれませんが、私自身が、その手付金で随分悩んだ経験がありますので、大変なショックを受けました。

 

それほどの時を置かず、その方とのお仕事は消滅しました。

世の中には自分の知らない世界がまだまだあるのだということを、痛みをもって学んだできごとでした。

 

そして私は、文庫本を買うのにも悩んで、一回家に帰って(笑)考えたりする小市民です。