「申し訳ありませんが、家の中の物を全部、家の前に出して写真を撮らせてください」
地球のリアルな今を知る。世界の平均的家族の持ち物と暮らしレポート。
戦火のサラエボから、モノのあふれた日本まで、世界30ヵ国、その国での「中流」と呼ばれる家族の持ち物全てを外へ持ち出して、カメラに収め紹介する。
(中略)
住まい、モノ、家族、暮らし。地球のリアルな「今」がわかる一冊。あなたの家にはどんなモノがある?
TOTO出版の紹介文より
この本と出会ったのは90年代。(今も版を重ねるロングセラーです。)
折にふれて読み返している本です。
紹介文にあるとおり、世界30か国の家族の「モノ」をすべて家の前に出して、記念写真のように撮影したものなのですが、写真一枚一枚の情報量がすごいのです。
ページをめくる手が止まります。
実物をご覧になっていただくほかないのですが、なかなかのインパクトです。
環境問題や戦争や地域紛争、家族の人数、使っている食器からペットの種類まで、あらゆる次元の情報と思考が頭の中で渦を巻きます。
この本の初見の感想は、たぶん「それにしても、モノにあふれた日本っていったい・・・」という感じなんだと思います。
他の国みたいなシンプルライフを目指そう・・・。
第一印象では私もそうでした。
ところが、長い間読み込んで眺め倒しているうちに、徐々に心情が変化してきました。
国とか、地域とか、モノが少ないとか、あふれているとか、関係なく、幸せを求める強い意志を感じるようになってきたんです。
風土も文化も社会制度も経済の仕組みも、まるで違います。
多少の差はあるにせよ、それぞれ何らかの不幸や困難を抱えているのがデータからでも読み取れます。
その困難を排除するのは、個々の努力では難しいことも伝わってきます。
それでも、それぞれの家族のそれぞれの形の、幸せを求める祈りのようなものが写真から伝わってくるんです。
モノが多いとか少ないとか、「なんでもいい」と思えるようになってきたんです。
建築やインテリアや家具やモノ。
いろんなスタイルや主義主張がありますよね。
でも、「こうでなくてはいけない」なんてものはないんだ、と私は思っています。
幸せのかたちに正解なんてありませんし、人それぞれ、本当になんでもいいんです。
以前は、「こうでなくてはいけない」をたくさん持っていましたが、気づいたら全部手放していました。
この本に出会い、時間をかけて、ものの見方が変わりました。
読み込むには、もっと時間がかかるかもしれません。
この本にとらえられている「地球」を自分なりに理解するのには一生かかるかもしれません。
私にとって、それ位大きな本なのです。
先日ラジオでこの本が取り上げられた際に話題にもなっていましたが、(「ファン」の間では有名な話だと思いますが)「日本代表」のウキタ家が良い味を出しています。
巻末のウキタ家のプロフィール。
[大切なもの]
(夫)家族
(妻)形見の指輪と陶器
これが、あとでジワジワと来ます・・・(笑)。