人と栖と

小声で語る 小さな家と本と音楽のこと

ゆきのうた 静岡県民の見果てぬ夢 

静岡の真ん中あたりにある海辺のまち。

砂漠に雪が降ったとしても、ここには降りません。

 

ひと冬に数回、「風花」の舞う日はあります。

そんな日はみんなで表に出て、手をひろげ、
「雪だよね!これ雪だよね!。」なんて言いながら、無理やり「雪」ということにして、はしゃぎます。

それが静岡県民。

 

小学生の頃、一度だけ夜中に雪が降ったらしい日がありました。

運動場の隅にうっすらと白いものがあったのです。

それだけで1時間目の授業はやめて、雪合戦ということに。

10分で終了しました・・・。

それでも、同級生はみんなあの日のことを懐かしく思い出すようです。

大事件だったのです。

 

静岡県民は雪に憧れます。

ホワイトクリスマスなんて、夢のまた夢なのです。

迂愚者の日記(2023_1121)

 

誰も気にしていない(笑)私のクリスマスソング制作の進捗。

普段は何かつくってもほったらかしなのに、今回は何故かしつこく手直しをしている。

「どうしてそんな事をしているのか自分でもわからない」と思うものほど全力でやることにしている。

それ自体も、どうしてなのかわからないけれど。

 

1db単位で各楽器のミックスをいじったり、

ドラムを打ち込み直したり、

ベースラインを変えたり、

ギターをたくさん重ねて録って、そして全部消したり(笑) 

 

どこが違うのかわからないファイルが10いくつもできてしまった。

混乱してきたので、一番新しそうなものをyoutubeに保存しておいた。

最初のものと、あまり変わらないような・・・。

 

でも、「小声うっすらコーラス」をのせたんだった。

小声すぎてほとんど聴き取れない。

 

小川洋子さん琥珀のまたたき」に出てくる小声コーラスの美しさを書いておこうと思ったんだけど、調べてみたら以前書いていた・・・。

akekurenote.hatenablog.com

3声のコーラスをつくって、本当は娘(受験勉強中)に歌ってもらおうと思っていたんだけど、奥様の「圧」を感じて、それは断念した。

仕方なく自分の悪声を重ねた。

「悪事を重ねた」みたいな言い方だけど。

いつか隙をねらって、娘に歌ってもらおう。

 

自分が聴くためのクリスマスソングをつくっている。

自分が読むための小説を書く予感がする。

youtu.be

家も根を張る

昔の写真データを時々整理します。

娘の赤ちゃんの頃の写真なんかを眺めていると日が暮れます。

 

我が家の赤ちゃんの頃の写真も出てきて、しばらく眺めていました。

久しぶりに会ったような気がします。

今は緑に覆われていてほぼ屋根しか見えないので、いろいろ忘れていました。

こんなプロポーションの家だったのか、へえーみたいな感じです。

宇宙船が不時着したみたいで、変な感じ。

敷地に馴染んでいません。

模型を地面に置いたようでもあり、風が吹いたら飛んで行ってしまいそうです。

夜景。

今は、庭やお隣さんの緑と相まって、家も土地に根を張ったように環境と一体化しています。

建築そのもののデザインは自分でするけれど、その後は自然の差配。

風化・ウェザリングも含めて。

少し手は入れるけれど、あとはお任せです。

家を、庭をapprivoiser(アプリヴォワゼ)する 「星の王子さま」から学んだこと

蚊が出なくなったので、久しぶりに庭のパトロール

4本あったキンメツゲのうち、1本が枯れていました。

そこそこ日も当たるし、水も撒いていたのですが・・・。

 

枯れた一本だけは窓から見えない位置にあったのでした。

ですから、それにまったく気づきませんでした。

そういえば長いことキンメツゲのこと、考えたこともなかった。

 

自分調べの、何の根拠もない定理。

半年間視野に入らず、意識にものぼらなかった植物は枯れる(ことがある)。

 

枯れたキンメツゲも「見られることもないなら、存在してても・・・」みたいな、存在するのをやめたかのような枯れ方でした。

「誰もいない森で倒れる木は音をたてるのか」みたいな、認識論あるいは量子力学的な問いを思いました。

思い出したのは、星の王子さまに出てくる、王子さまとキツネとの会話。

そこでは、おそらく最も重要な単語apprivoiser(アプリヴォワゼ)が登場します。

「君とは遊べないよ。僕はまだapprivoiserされてないから。」

 

長い間、apprivoiser「飼いならす」と訳されてきたようですが、学生時代、フランス語の授業か何かで読んで以来、しっくりこない謎の言葉でした。

「仲良くする」「なじみになる」など様々あるようですが、多分ぴったり当てはまる日本語が無いのでしょう。

 

何度も読むうち、「飼いならす」の部分は自分の中で別のイメージをもって読むようになっていました。

そのイメージは「ずっと気にかけていること」

それから「それで何かを失ったとしても、かけがえのない関係を築くこと」

 

人が住まなくなり、放置された家は朽ちてきます。

庭も、人の手が入らなくなるとすぐに荒れてしまいます。

家も庭も、いつも気にかけていないと、自分の心が離れてしまうと、途端に駄目になってしまいます。

 

愛憎入り混じりつつも、この家や庭をapprivoiserしています。

王子さまが星に残してきたバラを想うように。

 

西日で痛めつけられた外壁や基礎を何度でも補修し、葉が焼けたヒメシャラに、できるだけの手当てをします。

心無い工事で綻びのある部分を、どんなに手間がかかっても執念で直し、取替え、本当の自分の家に変えていきます。

時間をかけます。

時間をかけるということは、命を使うということ。

星の王子さま」文中の表現を借りて言い換えれば、

私が、私の家と庭のために失った時間こそが、私の家と庭をかけがえのないものにしているのです。

 

原始とか言われてるし

私の家、自分としてはモダンデザインを施したつもりなのですが・・・。

娘(イヤイヤ期継続中)の通う中学の男子は、この家のことを「平安」とか「縄文」とか呼んでおりました。

「江戸時代より前は大昔」みたいな雑な歴史認識。それが男子中学生。

 

以前ラジオで2500年前の、確かブッダの話題に触れていた時に、若いアイドルの方が「いやいや、今2020年なんですけど、プッ」みたいにツッコんでいました。

2020年なのに2500年前って(笑)・・・ということのようでした。

大体そんな感じのようです。

 

中学男子たち、最近は「原始」とか言っております。

ヴィンテージ感をアップしてきました。

この家のインテリアは、近くにある登呂遺跡竪穴式住居をモチーフにしています。

誰も気づいてくれないので、いつも自分から言ってしまいます。

中心に炉(キッチン)を置き、周辺に居間と寝間を配置し、四本の柱と梁で屋根を支える。

いろいろあって細かいデザインをしている余裕がなかったので、そんなざっくりとしたコンセプトのみで設計しました。

目を見張るようなディテールがない代わりに、家の祖型のようなものは表現できたような気がします。

左が登呂遺跡の竪穴式住居、右がうち。

中学男子よ、惜しい。

うちは「平安」でも「縄文」でもなく、「弥生」でした。

頑張って勉強するのだ!。

 

「深夜に聴く曲は速い」問題

深夜にふと目が覚めて、あるいは起き抜けの早朝、手元のラジオやスマホで音楽を聴くと、すごくテンポが速いですよね。

・・・・・速くありませんか。

・・・・・ここは、一旦速いことにして・・・(笑)

ただ仲間が欲しいだけの人。

 

ずっと昔からそのようでした。

音楽はひどい時には1.5倍速くらい。

音楽だけでなく、目覚まし時計の秒針のカチカチも、とんでもないテンポで鳴っておりました。

何十年も、深く考えることもせず、夜中はやることもないから時間も「巻き」で進んでいる、ということにしていました。

世界を雑にとらえています。

 

先日、奥様に普通そうなんですかと聞いてみました。

ポカンとしていました。

そういえば、ただの一度も人に話したことが無かったのでした。

 

はじめてネットで検索してみました。

深夜 音楽 速い

late night  music  feel  faster

 

世界には同志がたくさんいました。

その筋では常識である風でもあります。

「そんな奴おらへんやろ」(©大木こだま・ひびき)とか「ちょっと何言ってるか分からない」(©サンドウイッチマン)みたいな意見もありましたが、その辺りはネットなので。

 

どうやら日中と深夜の心拍数脳の処理能力の差によるものという説が優勢のようです。

ライブではテンポが速くなる(心拍数が上がって曲が遅く感じるので演奏が速くなる)などもその一つだそうですが・・・、それはわかるのですが自分の場合、それとは少し違うような・・・。

なかにはきちんとした論文などもあって、いろいろあたってみました。

心当たりのあるもの無いもの様々。

 

そこで、一週間ほど己の体で検証してみました。

眠りが浅いので夜中や朝方何度も目を覚ますのです。

自分調べのノーエビデンスですが、何となくわかってきました。

 

結論(個人の感想です)。

自分の場合、副交感神経優位の状態では速く感じ、交感神経優位の状態では平常

リラックスしていると速く感じるということですね。

 

春先にもう一度確認したいと思いますが、花粉症のモーニングアタックのやってくるタイミングの辺りでスピードが切り替わっていました。

睡眠中の副交感神経優位の状態から、起床時の交感神経優位の状態に切り替わる際に「モーニングアタック」はやってきますね。

・・・当たり前のように言ってますが(笑)、花粉症の方にはよくわかっていただけると思います。

夜中に目覚めた時から、あるいは朝方目を覚ました時から10分から15分後くらい、その「アタック」が訪れるタイミング辺りで、曲のテンポが平常に戻るのです。

あくまでも自分の場合ですが。

 

時空が歪んでいるのではないか、はたまた頭が・・・、などと心配しましたが、おそらくこれは生理現象のひとつ。

これからは深夜・早朝の、ライブバージョンみたいなアップテンポになった曲を積極的に楽しみたいなと思います。

 

まるで世界の役に立たない報告でした。

 

ところで、速く感じる人とそうでない人が同じ曲を聴いている時、そこに流れている時間はどうなってるんだろう?。

また、新たな疑問が・・・。

「地下鉄の電車はどこから入れたんでしょうね」(©春日三球・照代)くらいに、それを考えるとまた一晩中寝られなくなってしまいます。

姉の形見のメトロノーム

安価なものですが、ついテンポにこだわってしまう私の宝物。

悲しい時にそっと始まった家づくりがありました

ハウスメーカーさんのCMは夢に溢れていますね。

若いパパ、ママと可愛いお姉ちゃんと弟さんが白い朝日を浴びて幸せそうです。

実のところ、家づくりは思ってもみなかった困難に直面したりして、つらいこともあったりします。

ですから、出会いから引き渡しまで、できるだけそんな幸福のイメージのなかで家づくりを経験できるように、手を尽くしてくれるハウスメーカーさんのお仕事は、それをサービス業と捉えても大変価値のあることだと思っています。

わざわざ辛い思いをする必要はありませんからね。

困難を優しくオブラートで包んで、可視化しないというのもプロの大切な仕事かと思います。

 

私の場合は自分が建築士で、かなりイレギュラーな家づくりをしているので、もちろん自分を守ってくれるそのような優しいオブラートはありません。

そのうえ、体調が良い時でないと書くことはもちろん、思い出すことも苦痛なほど、次々とやってくる不幸と周囲の無理解や裏切りの中で、誰にも祝福されない塗炭の苦しみの中での家づくりでした。

 

娘の小学校入学に間に合わせたい。

ただただ、それだけの理由でがむしゃらに図面を描いていました。

 

思い通りの設計や施工ができるはずもなく、夢に描いていたプランの半分も実現できていません。

竣工後も、見るのも嫌なくらいこの家を憎んでいて、出かけて帰宅するときなど、この角を曲がったら全部無くなって更地になっててくれないかな、なんて本気で思っていました。

できることなら、一からやり直したいと。

 

暗いトーンの文面ですみません。

 

ところが、です。

それから9年近くたって、何故かはわかりません、この家に対して少し愛おしさが生まれてきているんです。

「幸先」とか「縁起」とか「始め良ければ」みたいな言霊に苦しむことは少なからずあるのですが、それでも、悲しみのさなかに建てたこの家が愛おしくなりつつあるんです。

 

そんなことを考えつつ、ぼんやり天井なんかを眺めながら、学生の頃から大好きな、浅香唯さんの名曲「セシル」を聴いていました。

 

恋は楽しい時より 悲しい時に

そっと始まった方が 長く続くね

 

「セシル」浅香唯  作詞 麻生圭子 作曲 NOBODY

 

・・・たぶん、これです。

上手く説明できません。

でも、これなのです。

 

悲しい時にそっと始まった家づくり。

何もオブラートに包まない、むき出しで体験した家づくり。

涙を流しながら描いた図面。

だからこその、強さもあるのだと思います。

youtu.be

まとまりの無い文になってしまいました。

でも、もし必ずしも恵まれた状況ではない中で家づくりに向き合っている方がいらしたら、

きっと大丈夫ですよ!。

もしよかったら「セシル」を聴いてみてください。

多くの方と同じように、私もこの曲に救われた一人です。

 

27歳のビーチクルーザー(←今日知った名前)

天気が良かったので自転車を洗いました。

27年前に仙台で買ったのでした。

27年も乗っている貧乏性。

記念に写真を撮って、グーグルレンズというのを押してみたら、ビーチクルーザーと出てきました。

そんな名前がついてたのか。

 

調べてみたら、
ビーチクルーザーはもともと、砂浜や海岸沿いをサーフボードを抱えて走るために作られた自転車
とのこと。

そんな事一回もしたことがありません(笑)。

そういえば、自転車屋さんが砂浜がどうこう言ってたな。

通勤に使うって言ったのに、どうしてこれを勧めたんだろう。

サーファーに見えたのかな。

絶対ないな。

 

その後、坂の多い仙台で難儀しました(ギアが無いので)。

 

うちには軽自動車一台とこの自転車一台。

親子3人の移動手段はこれだけ。

前にも書いたような気がしますが、

「軽でかわいそう」という謎の慰められ方をされたことがあります。
「平屋でかわいそう」もあり。)

でも、ガッツポーズをしたいような、何だか爽快な気分です。

 

戦争の親玉 化学反応を起こした「逆替え歌」

「メロディーはそのままで歌詞を替えて歌う」のが替え歌ですが、その逆の、「歌詞はそのままでメロディーを替えて歌う」のは何て呼ぶんでしょうか。

それも替え歌なんでしょうか。

逆替え歌かな?。

 

そんな「逆替え歌」の傑作が、レオン・ラッセル「戦争の親玉」(Masters of War)

 

「戦争の親玉」(Masters of War)ボブ・ディランの名曲。

youtu.be

Masters of War
       Bob Dylan

Come you masters of war
You that build all the guns
You that build the death planes
You that build all the bombs
You that hide behind walls
You that hide behind desks
I just want you to know
I can see through your masks

 

レオン・ラッセルは、その名曲の歌詞を別のメロディーにのせて歌いました。

1970年発表のファーストアルバムに収められていましたが、当局のクレームがついてしばらくお蔵入りになっていました。

この歌詞をあのメロディーにのせる」という一つの操作が化学反応を起こして、これほどの力を持つなんて。

大昔、はじめてこれを聴いた若造は、創造の持つ底知れぬ力を信じるようになったのでした。

音楽や詩に説明なんていりませんね。

youtu.be

メディアがつくる歪んだ情報空間。

ともすると思考停止をしてしまいます。

そんな時は、繰り返しこの曲を聴いています。

環境に呼応する建築   とらや工房・安曇野ちひろ美術館

先日、御殿場の東山旧岸邸に伺ったのですが、同じ敷地内に「とらや工房」がありました。

www.toraya-kobo.jp

内藤廣さんの設計ですね。

なにやら行列ができていました。

皆様の会話によると「おこわ」かなにかの列のようでした。

行列がはけてから、お茶をいただきながらゆっくり見学することができました。

 

写真で見て想像していたより、こぢんまりとした素敵な建築でした。

実物が想像より小さい建築は名建築が多いような気がします。

それがヒューマンスケールということなのかなと思います。

敷地が本当に素晴らしく、建築もその環境に呼応していました。

 

内藤さん設計といえば、昨年伺った「安曇野ちひろ美術館」も素敵でした。

chihiro.jp

当日は曇っていたので、公式ホームページから写真をお借りしました。

何故曇っているとダメなのかというと・・・、

この背景!。

安曇野ちひろ美術館 公式ホームページより

背後の安曇野の山並みのリズム、勾配と呼応しています。

それこそヒューマンスケールの建築と、発想のスケールの大きさ。

この対比が見事です。

建築に限らず、こんな仕事ができたらいいなと思います。

 

我が家の屋根。

方角的には屋根の向こうに富士山があるのですが、建て込んでいて見えません。

ですから、誰も気づいてくれなくて当然なのですが、屋根の勾配をこっそり富士山の平均傾斜に寄せています。

そして、自分から言うことにしています(笑)。

 

あのクリスマスソングはもう響かない

この夏、自分のなかでは大きな事件があって、子どもの頃からのアイドル、憧れていたミュージシャンのリスナーをやめました。

40年以上の時間とたくさんの思い出。

そんな日が来るなんて思ってもいなかったけれど、一瞬のことでした。

 

「推し」という言葉もありますが、自分の場合、一人を好きになりすぎるのは大きな負担になっていました。

あんまりおまえさんがだれかを崇拝したら、ほんとの自由はえられないんだぜ。
 

 トーベヤンソンムーミン谷の仲間たち」 春のしらべ より  山室静 訳

スナフキンの言うとおり!。

 

CD棚の一軍スタメンの場所に大きな穴が開きましたが、3か月の間に少しずつ、忘れていた素敵なアルバムたちで埋まっていきました。

今は何だか爽やかな気分です。

自由です。

 

1983年以降はじめて、あのクリスマス(失恋)ソングが響かない冬を迎えます。

 

でも、最高のクリスマスアルバムやクリスマスソングたちが手元にあったのでした。

クリスマスソングって大好きです。

ポリコレ的な言い方だと「ホリデーソング」なんだろうけど、もう面倒だからクリスマスソングでいいや。

楽しくてキラキラしていて幸せ感の固まり。

クリスマス自体にはそれほどの思い入れはないけれど、それでもクリスマスアルバム、クリスマスソングには特別の思いがあります。

 

特に、「A CHRISTMAS GIFT FOR YOU

ハル・ブレインのドラム

ロニー・スペクターやダーレン・ラブの大迫力のボーカル

ジャック・ニッチェのアレンジ

フィル・スペクターのプロデュースワーク

ポップスの、ロックンロールの教科書のような奇跡のアルバム。

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長くなってしまいそうなので、またあらためて。

冬なので、クリスマスソングのことは少しずつ書いてみたいなと思っています。

その家を誰のために建てますか? 小さな家の由来記9

2023年11月4日

親のためか、子どものためか。

土地探しや設計のポイントをどこに置くかということなんですが、正解はたぶん無くて、「その時々、人それぞれ」かなと思っています。

私の場合、当時は「子どものため」でした。

長文が書けなくなってきたので、そこについてはまたあらためて書いてみたいと思っています。

ただ、そんなことについて書いた以前の文章があったので、思ひ出に残しておきます。

2017年 5月27日 
土地選びの知と情  

 

土地を選ぶ時には、金銭的なことも含め、その後の影響が大きいですし、検討する要素が多すぎて悩みますね。

よく勧められるのは、仕事でやるように条件を箇条書きに書き出して、重要度に応じて点数をつけたりして、できるだけ客観的に判断できるようにすることです。

これは言ってみれば「知」の部分。

一方で、どうしても上手く言葉で表現できなかったり、まして数値化などできないものもありますね。

そちらは、「情」の部分とも言えます。

多分、この「知」と「情」のバランスが上手くとれた時に、土地選びもスムーズに運ぶんだと思います。

 

私達の土地選びの際も、あっちに揺れたりこっちに揺れたり、なかなかバランスがとれず難儀をしました。

 

地元に戻ってからは土地を探す気力も失くしていたので、実家がもともと持っていた雑種地を借りようかということになりました。

敷地形状や周辺施設、法的な規制など慎重に検討し、それこそ「知」の部分はまずまずでした。

そこで、設計や施工者探しなど計画を進め、地盤調査の結果も問題なく、土留めの工事など着々と準備をしていました。

 

ただ、一点だけ気になることが・・・。

その後すぐ産まれる娘が通うことになる学校は、それほど遠くはないんですが、敷地は学区の一番「はずれ」で少し寂しい所。

下校時などおそらく最後の一人になってしまうんです。

女の子だとわかっていたので余計に気にかかっていました。

頭の片隅で何となくうっすらと気になりながら、それでも他は問題ないし、完璧なものは無いよねと無理に納得して一応作業を進めました。

「情」の部分を見て見ぬふりをしていたんだと思いますが、やっぱりきちんとバランスをとっておかないとだめなんですね。

 

娘が無事産まれ、はじめてその顔を見た瞬間、夕方薄暗くなってから一人トボトボと家路をたどる娘の姿が頭をよぎりました。

次の瞬間には別の土地を探す決断をしていました。

時間と労力とコストをかけて準備したものを、一瞬で捨てました。

私は何事にも度が過ぎるほど慎重で、あれこれ悩み、優柔不断で決断力がありませんが、この時ばかりはビジネスエグゼクティブのようになっていました。

 

再開した土地探しの旅と家づくりの数年を経て、今、娘は小学生。

我が家の前はこども達の通学路。

いつも賑やかな声が響いています。

そのうち娘が友達に囲まれて大騒ぎしながら帰ってきます。

これこそが望んでいたこと。

こんなに幸せなことはありません。

 

2023年11月4日

小学校、中学校ともに徒歩数分。

その恩恵もあと5か月で終わりです。

春からは、この家と土地の新しい目的を探していきたいと思っています。

 

高校受験 シフトアップをした15の夜

友達が高校の募集定員の載った新聞記事を持ってきてくれました。

情弱ぶりをよくわかってくれています(笑)。

ありがたいです。

 

うちには受験生がいたのでした。

 

娘はマンガやアニメが大好きです。

できるだけ好きな事にはのめりこんでほしいので、勉強のことはあれこれ言わないできました。

大切な15歳の時間を受験勉強だけで埋めてしまうのは寂しいので。

 

ただ、試験まであと4か月、集中してやりきってしまうのにちょうど良い期間。

一気に加速して手ごたえを感じてほしい。

そこで、話し合って中期の計画をたてました。

 

もともと自分で工夫して勉強していたようなので、補足する程度でしたが、上手くのりきれそうです。

アニメを観る時間をどう捻出するかも話し合いました。

こんな親は珍しいのかもしれません。

 

私には、ちょっと受験名人のようなところがありました。

もちろん試験が好きなはずもなく、嫌いです。

ですから、低能力にもかかわらず、できるだけ効率よく、一度で済ませたい一心で様々なテクニックを編み出してきました。

 

細かい内容は忘れましたが、女子レスリングの有名選手がこんなことをおっしゃっていたように記憶しています。

相手選手の体臭がきついので頭にきて、一刻もはやく勝負をつけたいと思い、それで勝ってきた。

ちょっとそれに似ています(笑)。

 

テクニックを、少しずつ娘に伝授しています。

万年反抗期なのに、これだけは素直にきいてくれます。

一目置いてくれているのか。

 

娘は、大丈夫だと思います。

 

うちは全体がワンルームで勉強部屋が無いので、観葉植物とゾウさんのモビールで結界をつくって、勉強スペースの完成です。

 

生垣は見通し優先で

うちは角地にあります。

庭をぼんやり眺めていると、時々自転車どうしが衝突しそうになっているのを見かけます。

「自転車は左側通行」ということを守ってくれれば良いのですが、子ども達には通用しません。

 

高校生ぐらいになると、ノーブレーキはもちろん、鈴鹿八耐かっ!ていうくらいにハングオンしてコーナーを攻めてきます。

角の隅切りのところは見通しを確保するために、もともと生垣を作っていないのですが、見通しがあればあったで更にチャレンジをしてきます。

月に一度くらいは一人でコケている子もいます。

もしかしたら、見通しが悪すぎるくらいの方が用心するのかも、などと思ったりもしますが・・・。

 

事故がおきてから後悔しても仕方ないので、さらに見通しを良くするために、せっかく育ったトキワマンサクの生垣ですが、鋭意剪定をしております。

 

生垣は見栄えよりも見通し優先で!。

※剪定中の生垣

本当は緑のおじさんみたいに、ずっと角で見張っていたいくらい。

角のところでババヘラアイス的なもの、やってみようかな。

ババヘラ、ご存じですか?。

第2の故郷秋田のソウルフードです。

youtu.be

 

敷居のカモフラージュ 東山旧岸邸

吉田五十八さん設計の東山旧岸邸の思ひ出を小出しに書いています。

他に見学者がいなかったこともあって、あれこれ質問しまくる私に、案内の方が熱心に説明してくださいました。

この建物への愛情をひしひしと感じました。

 

和室ゾーンに入る襖のところ。

テンションのあがってきた案内の方が、養生で敷いてあったカーペットをおもむろにめくりあげたそこに、それはありました。

写真ではわかりにくいかもしれませんが、襖の敷居です。

敷居といっても床材に細い溝が切ってあるだけです。

床材の連続性を損なわないためですね。

さらに、

写真の2の部分が本来の敷居部分ですが。1,3,4,5と等間隔に床材にわざわざ同様の溝を切ってあります。

素敵ぢゃありませんか!。

「もともとこういう床材だったから、たまたまあったその溝を使いました」みたいな感じですね。

こういう遊び心、たまらなくなってしまいます。

設計や施工を愛情を込めて、楽しみながらやっていた様子が目に浮かぶようです。

 

大先輩に失礼ではありますが、大変な親近感を感じます。

私にも、ちょっとさういふところが・・・。

 

我が家の大きな格子戸は垂木に固定した鴨居から吊っていて、
下部に取り付けたアングルをデッキの隙間をガイドにして、滑らせています。

格子戸を奥に引いてしまうと何も残らず、単純にデッキの床面だけになります。

「たまたまあったデッキの隙間を使いました」という「てい」の設計です。

本当は、工務店の方と一緒に随分頭をひねって考えました。

大事な部分で抜けているものは多々あるのに、そんな部分だけやたらと精力を傾けてしまいます。

見学にいらした方も、誰も気づいてくれないので、いつも自分から言っています(笑)。

 

でも、そんな遊び心も、なにもかも平和あってこそのものですね。

あらためて思います。

東山旧岸邸の逆さ庭

御殿場にある吉田五十八さん設計の東山旧岸邸

リビングテーブルの天板は鏡のよう。

庭の緑を映し出すように計算して天板を選び、配置したそうです。

逆さ富士のように庭が美しく映し出されます。

紅葉の季節にまた訪れたいと思います。

家の中に素敵な場所があるのって良いですね。

季節や時間帯によって突然現れるマジックアワー。

そんな時間を家の中で体験できるような設計をしたいと思います。

 

自分の家には計算して、あるいは図らずも生まれたそんなスポットがいくつかあって、日々楽しんでいます。